3.1+5.9=9.0?

3.1+5.9=9.0?

 あるテレビ番組で、ある小学生が算数の問題で3.1+5.9=9.0と回答したら、正解は9だとして減点されたということが話題になっていました。この件とに関する番組での結論は「最も簡単な形で回答しなさい、という但し書きが無いのに減点するのはおかしい。」ということでした。

 私は少し違う意見です。「最も簡単な形で回答する」ということは数学では暗黙の了解だとされているので、9.0という回答はやはり良くないと思います。例えば、2/4は約分して1/2にしないと減点というのは、当然だと考える人が多いでしょう。入試問題のように厳密さを要求する場合は但し書きも必要でしょうが、日常の指導において「最も簡単な形で回答する」ということを教えるために減点するというのは、あるべきことだと考えます。

 ちなみにこれが理科の問題だったら、逆に9.0が正解で、9は減点されるかもしれません。これは理科で扱う数値の多くは誤差を含んでいるので、小数点以下の書き方で誤差の大きさを表しているからです。9.0は0.1ぐらい誤差があるのに対し、9は1ぐらい誤差があることを示します。これも入試問題であれば「有効数字を考慮して」と但し書きがあるべきところですが、普段から有効数字や数学との違いを気にしながら学習すると良いと思います。回答するときに、特に但し書きが無ければ、数学は分数、理科は小数にするというのも、覚えておいてください。

 

 

体積=縦×横×高さ?

 同じ番組で「ネット上の噂」としながらも、「直方体の体積の計算で掛ける順番が違ったら減点された」というのもありました。番組の結論は「掛け算は結合法則・交換法則で順番を変えても答は同じ。根拠も無いのに減点する先生は良くない。」というものでした。

 これにも異論があります。「ネット上の噂」ということは、根拠が有るか無いかを番組では直接確認していないということではないでしょうか。確認もせずに相手が反論もできない状況で批判するというのは、道徳的にも良くないことだと思います。それではもし根拠があるとすればどのようなことでしょうか。例えば縦8cm、横5cm、高さ7cmの直方体の体積を、5×7×8と計算していたら、私なら減点しないまでも指導はします。5×7×8=35×8=280より8×5×7=40×7=280の方が計算が簡単だからです。「順番を変えても結果は同じ」ということだけでなく「なるべく楽に計算する順番を考える」ということは立派な指導の根拠になると思います。